Beranda / 恋愛 / 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない / ―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』4

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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』4

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-01-20 17:19:25

朝になった。

ほとんど眠れないまま目が覚めた。

すごく体が重たい気がする。顔も浮腫んでいるに違いない。

リュウジには泣かされてばかりだったな……。

ブーブーと携帯が震えた。

『おはよう、芽衣子』

毎朝日課になっているリュウジからメッセージが届いた。

彼は、別れようって言ったのに理解しているのだろうか。

『別れたんだから、メールしないで』

乱暴に携帯をベッドに置いた。

こうやって五年間、リュウジに振り回されてきたのだ。

体を許してしまった私が悪かった。

考えてみれば、しっかりとした交際スタートの言葉もなかったし。

「はぁ……」

もう、振り回されたくない。

出勤準備をしなきゃ。立ち上がってバスルームへ向かった。

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